想像力のトレーニング

2008.03.08|magronbass|SELF-GOVERNMENTARTEDUCATIONSOCIETY・GOVERNANCEMEDIA・COMMUNICATIONPHILOSOPHYPermaLinkComments (0)

ミニゲームのプロジェクトをこなしていくごとに、他人の想像力の乏しさを肌で感じる。 これは、自分のクリエイティビティを鼻にかけているわけではなく、明確に想像力の技量の差がある。 なんというか、想像力は才能ではなくて、技術なんだと思う。 で、その技術をなんらかの理由で育てれなかった人が多い、と言いたいわけだ。

商品(ゲーム・広告・その他)のバックボーンになるクリエイティブがうまくいっているものと、いっていないものには明確の差がある。 それは消費者側からしても明確だと思う。 うまくいってる場合、製作のプロセスも円滑だし、上がる商品もわかりやすい。 じゃ、どういうのが「うまく」いってるクリエイティブなのか。

メソドロジカルな話をすれば、コンセプトがあって、それを具体的な案に落とし込んで、スケジュールと予算に見合ったインプレメンテーションで実行する、って流れになっちゃうけど、クリエイティブの流れってもっと有機的で、わけがわからない。 チームの場合、もっとも重要なのは、元のコンセプトがなんだったのかってより、メンバー一人一人がそれをそう理解したか、それによって一人一人の色の出方が違う。 一歩目から勘違いしてる人は、修正しにくいし、一歩めから話を聞かない人は、正直、使えない。 自分のコンセプトを勝手に作り上げてしまって、プロジェクト内に自分のプロジェクトを作ってしまう人も、使えない。 全員がコンセプトの共通理解をもって、その解釈を共有した時点で、プロセスはスタートする。

次に、ブレストが入るわけだけど、そこにもうまくいかせるポイントがいっぱいある。 アイデアの本になるものだけど、個人的な見解、資料に基づいた見解、いろいろとブレストの前に資料を集める必要がある。 アメリカの場合は、ほとんどの人がまったく資料を集めないから、この段階の成功・不成功は既存知識の量の反映になることが多い。(もとから知らない=失敗)

じゃ、正しい知識を身につけたとする。 そこからアイデアを出すには、全体の状況をまず作り上げないといけない。 話し合いの中で、その「世界」を作り上げていく。 (話戻るけど、情報が足りないとこの「世界」が作れないので、失敗するのは当たり前) この「世界」をどれだけ細かく作れるかによって、全体の善し悪しが決まると思う。 ようは、もっとも重要ってこと。 アイデアを出すにあたって、みんなが、この「世界」に入って、そこに立って考えないといけない。 そこにあるモノ、世界観、キャラクターやその他ツールを駆使して、アイデアを作り上げていく。 同じ「世界」から来た、同じツールで作られたアイデアは、自然とまとまるし、まとまりがあるからパーツ交換が効いたり、アイデア同士の相互作用も強い。 アメリカの場合、みんながみんな、勝手に「世界」を作って、「世界」同士の競争になりがちだから、どれかに決めたとしても、結果的にはみんな、自分の「世界」からアイデアを出す。 まったく統率が取れてないことが多い。

この「世界」を作るのが非常に重要なわけだけど、想像力の技量となんとなく関係があることを最近実感した。 ものすごくあたりまえなのかもしれないけど、人によって、「世界」を作るために必要な、ベースになる「世界」の情報が違う。 例えば、「オフィスでゴルフ」という世界がある。 その時点ではまったく反応せず、「そのアイデアはアホだ」って反応するAさんがいて、「オフィスかぁ、ボスのコップがホールだったら面白いな」ってBがいる。 この時点で、両方の頭のなかには、ゴルフクラブとボールぐらいは共通してある。 Bの中にはコップ、コップの置いてある机、ボス(すでに「ちょっと仕返したい」ボスって色がついてる)、コップに入ったときのビジュアル的な反応と、ボスのリアクションぐらいまでがよぎっている。 すると、Aは「はずれたらボールが清掃のおばちゃんに掃除機で吸い取られちゃったりね」。 その同じ世界に、おそらくAもBも知っている、清掃のおばちゃんと、掃除機ってアイテムも入った。

Aは、Bの発言によって、世界の一部ができあがり、その情報を使ってさらに清掃のおばちゃんってキャラクターを増やした。 Bの発言で、発想の臨界点を超えたということ。 で、人によってこの臨界点が全く違う。 題材によっても違う。 で、いい「世界」を作るには、できるだけ多くの人に、この臨界点を超えてもらう必要がある。 それと、メンバーには、その臨界点の「超えかた」を心得てもらう必要もある。

個々人の発想で変貌する世界は必然的に不安定。 それを安定の方向に持っていきたわけだから、一つ一つのアイデアで「世界」をどう変更するかを考えないといけない。 というわけで、アイデアを投入する時に、ある程度は世界に対してどういう影響があるかを割と細かく考えないといけない。 上の話でも、「オフィスじゃなくてさ、砂漠ならもっとも面白いよね」という発言は、ボスのキャラクターや、清掃のおばさんなどの、オフィス世界の産物がすべて無駄になるので、あまり建設的なアイデアではない。 面白いかもしれないけど、このコンテクストにおいては、間違えた発想になる。 ここで、一歩下がれるかどうかも、想像力の技術の内だと思う。 人によっては、この枝わかれが発生すると、二度ともとに戻れない人が多い。 ブレストの最後まで、そにか設定を砂漠に移そうと頑張って、全体の発想を濁らせてしまう。

世界を膨らませている時点では、どんどん完成度を高めていく。 ボスも入れば、清掃のおばさん。 ボスはすでに「仕返ししたい人」って色が着いているから、清掃のおばちゃんは「むすっとした顔で、足の下を急にほうきで掃除しにくる」、ちょっとびっくり不気味な人。 オフィスは製鉄所の二階にある、古い機材に埋もれたオフィス? それとも、しむけんが課長として出てきそうなレトロなオフィス? (しむけんの場合なんか、ほとんど人が、その絵に手を突っ込んで、セットを触れるぐらい鮮明に頭に描けるだろう) こうやって世界とキャラクターをどんどん膨らませていって、それをベースに、具体的なアイデアを作り出す。

発想がうまく出ない人もいる。 世界がまだ不完全で、臨界点を超えてない人は、さておき、たとえば、いまいちはじききれてない人。 「そうそう、オフィスに観葉植物とかあったり」 発想ではあるけど、あまり意味がない。 本当は「プラスチックのやつがドンっとあって、そのよこにパッサパサになってる、よくもらう小さいサボテンが10個ぐらいあったり」っていいたかったのかもしれない。 これなら、世界の新たな一面を見せてくれる発想になる。 ただ、もしかしたら自信がなくて、細かく言わなかったのかもしれない。 もしかしたら、「世界に関するなにかを教えてくれる発想」が「効率のいい(effective)発想」だと理解してないのかもしれない。 もしかしたら、発想力が乏しいだけなのかもしれない。 ま、一概には言えないけど、やりかたさえ練習すれば、誰でも上手になれる気がする。

なんとなく、方向性としては、ストーリーやら、ゲームやら、そういうものに特化したプロセスにも思えるけど、これはたぶん、共同作業で発想を作り出す行程の、基本的なガイドラインになると思う。 このプロセスは書き出すとあたかも当たり前なことに思える。 しかもうちらの間だと、もうこのプロセスが脳裏に焼き込まれてるから、ものすごく当たり前に感じるかもしれないけど、世の中には発想力をうまくコントロールできない人がものすごく多い。 内の会社のデザイナーですら、うまくできいないと思う。 

クリエイティビティは魔法でもミステリーでもなんでもない。 ある程度なら誰でも習得することができるし、逆に、才能があっても発想力がコントロールできないならば、その才能は無駄になってしまう。 だから、それを育てる何らかのメソドロジーがあれば、クリエイティブを売っている会社、特にチーム単位で動いている場合は、ものすごく助かる気がする。

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