「断らない」精神が選択肢を増やした<前編>

学生目線で、先輩方に多様な「幸せの見つけ方」を問う。
不確実な未来に前を向く、バックキャスティングメディア「FOREFACE」。

第2弾は、学生時代はドットジェイピーで活動し、現在はグロービス経営大学院の学校運営として活躍されている山岸園子さん。学生時代はどんな風に過ごし、どんなことを考えて今のお仕事についたのか、お話を聞いてみました。

山岸園子 氏

聖心女子大学文学部卒業。グロービス経営大学院(MBA)修了。
株式会社リンクアンドモチベーションにて人材育成や組織風土変革を担う部署にて施策提案・実行に従事した後、若年層向け教育サービスを提供する新会社立ち上げを担当し、サービス企画・営業企画・採用育成などを推進。その後グロービスに入社。現在はビジネススクール部門のディレクターとして、マーケティング・学生募集企画の戦略策定・実行などを務めている。
同時に、リーダーシップ開発と倫理価値観、クリティカル・シンキングなどの講師、また志領域の研究・コンテンツ開発も行っている。

政治記者を目指していた学生時代

山岸さんはどんな学生時代を過ごしてましたか?

 中学から附属学校に入っていたので大学まで聖心女子学院で過ごしてきました。そもそもこの中学を受験したのは、小学校4年生から就職活動を始めるまでNHK政治部の記者になりたかったからなんですね。

当時見たNHKの「映像の世紀」がものすごいインパクトで、とても感動したんです。こういうものを作りたいと思いました。それと元々、食卓で時事ネタが話題に上がる家庭だったので、政治というものには漠然と興味があったんです。調べたところ、聖心女子大学からは何名もNHKに就職している方がいらっしゃったので、キャリアに繋がりやすいと考えて、附属中学を受験することに決めました。

学生時代の山岸さん

 だから中高大学生活では、どうやったら政治記者になれるかを考えながら、やることを取捨選択する、そんな時間を過ごしていました。

大学入ってからは、少しでもメディアや政治に近づけるような活動がしたくて、大学1年生になってすぐに、ドットジェイピーというNPOが主催する、政治家のもとでインターンシップができるプログラムに参加しました。今から18年前になりますが、当時、大学1年生から参加できるインターンシップはほとんどなかったので、調べた中で唯一参加できたインターンだったという理由もあります。

結果そこで色々な経験をして考えが変わったので、政治記者の道には進みませんでした。

働く目的を作ってくれた印象的な時間

ー学生時代の経験で一番自分の糧になったものはありますか?

やっぱりドットジェイピーの活動ですね。

インターンそのものは3ヶ月間で終わるんですけど、その後に運営側に回って、卒業するまでほぼ丸4年、そこで「働く」ことになります。

時間的にも金銭的にも社会人みたいに働いていたんじゃないかな…(笑)

その中で、社会に大きなインパクトを与えるような仕事をしている、とてもすごい大人たちとも関わることができたんです。話をする機会や一緒に仕事をさせていただく機会もたくさんあって世の中にはこういうすごい人たちがいるんだなって実感しました。

それから、そこにいる大人たちはみんな極めて人生を楽しんでいるんですよ。社会人って、月曜日の朝、辛そう電車に乗っているイメージがあったんですが(笑)、そんなことはないと身にしみて感じまして、「あぁこういう人が増えれば、もっと世の中素敵になるんじゃないかな」って心底思ってしまったんですよね。

ーそういう人を目指すよりも、こういう人を増やしたいっていう考えになったんですね。

もちろん自分も、こうなりたいな!と思いました。

ただ、当時ドットジェイピーで「提供される側になりますか、提供したい側ですか」っていう言われ方をよくしていたから、仕組みを作る側に回りたい気持ちになりやすかったんだと思います。だから仕事を選ぶときには、社会で楽しく健全に働く人の総数を増やすようなことがしたいと思って就職活動を始めました。

だから、このドットジェイピーでの活動は働くことに対する意識を高めてくれたのもそうですし、働く目的を作ってくれたという意味でとても印象に残っている時間ですね。

ドットジェイピーでの大きな学び

ードットジェイピーを中心に活動的な学生時代を過ごしていたんですね。

そんな中で当時、大切にしていた価値観はありますか?

当時を振り返ると「断らない」というのはありましたね。

例えば、案件が何か言われずに「この日空いてる?」とだけ大人に聞かれたりするんです。でも、「なんの案件ですか?」って聞かないようにしてました。「空いてます!」って言うです。それで無理矢理にでもあけるようにしてました。

そこには何か面白いことがあるんだろうな、とか次の自分につながるようなことがあるのかもしれないという思いはありました。もちろん結果として、何にも得られないこともあるかもしれませんが、声をかけてくれたことに対して断る理由がないので、やっぱり断らないっていうのは大事にしてました。そして結果的に、そういったことの積み重ねが人生の選択肢を増やしたなという自覚もあります。

あともう一個、「頑張る」っていうのは大事にしてましたね。組織のカルチャーとして、そうせざるをえなかったというのもあります。ドットジェイピーはNPOでありながら、標語は「目標必達」なんです。数字目標を自分たちで設定して、予算会議もあるんです。自分たちはこれくらいの目標を達成するので、これくらいの予算をください、ということをやっていたんです。大学生の時に、こういった責任の持ち方をさせてもらったことは、本当にありがたいことでした。

ー学生にとってはハードな環境ですね。自分自身で数字目標を設定して、その達成に向けて頑張るなんてこと中々ないので、相当学びのある経験になりそうです。

稼ぐってすごく大変なんだというのがわかった経験でもありますし、自分たちで立てた目標を、ちゃんと自分たちで正解にしていかなければいけないというのを学んだ経験でもありましたね。目標を立てたとして、それいたら達成できますか?と言われたら、できません。自分で宣言したことを正解にするためには、やっぱり頑張る以外の選択肢はないんです。頑張って成果を出したら、ちゃんと信頼してもらえるということも事実でしたし。

そういう意味では、年齢とか職業とか学生であるとか関係なく、ちゃんと頑張り、成果を出すということにはこだわってました。これは人生の中でも大きな学びになったと思います。

ー大学生だからって言い訳できない環境だからこその学びですね。

「断らない」も「頑張る」もシンプルなことだからこそ、簡単にサボれてしまうので私も意識しないといけないなと思いました。

やりたいこと、ど真ん中の仕事

ードットジェイピーの長年の夢だった政治記者から社会で楽しく健全に働く人の総数を増やすようなことがしたいと人生の目的に変化のあった学生時代でしたが、現在はどんなお仕事をされてるんですか?

最初はリンクアンドモチベーションに5年半くらい勤務し、2012年の9月からグロービスに転職しています。

グロービスにはいくつか事業がありますが、私は大学院の運営しています。いわゆる学生の方が通う学校ではなく、ビジネスパーソンだけが通い、最終的にMBAという経営学修士を取得する場所です。その中で私は、マーケティングや受講のサポート業務に携わっています。

ーそのお仕事は学生時代のイメージとギャップがありますか?

あまりないですね。ドットジェイピーの活動から、仕事楽しいなと感じる人の総数を増やしたいと思っていたので、やりたいことど真ん中のことができていると感じています。

グロービスでは経営学を学ぶと同時に、自分が人生で何をしたいんだろうという「志」を、2年間真面目に考える学校でもあります。さまざまな年齢のビジネスパーソンが、自分の人生で何を成し遂げていきたいのかを、真剣に考えていくんです。

学生時代にグロービスで働くとは思っていませんでしたが、高い抽象度の中では、やってることに違いはないです。

乗り気じゃなかった異動が転機になった

ーグロービスに行く前はリンクアンドモチベーションにいたとのことでしたね。どういう気持ちの変化があって転職なさったんですか?

最初に勤めた会社は、リンクアンドモチベーションという組織人事系のコンサル会社でした。働く人、ひとりひとりのモチベーションを高め、より良い組織を創っていくということを生業にしている会社で、自分にやりたいことに近いと思って就職しました。

当時は相当、ハードな日々を送ってました。でも元々働くことも頑張ることも好きなので、仕事が生きがいだと思えるくらい楽しく働いてました。

入社して1年半のタイミングで、異動が決まったことが転機でした。

元々、BtoBのビジネスを行う会社でしたが、初めてBtoCサービスを創るになったんです。

事業の詳細は何も決まっていない状態から、上司や同僚4人で立ち上げをすることになりました。

当時私は、BtoCの事業は全く興味がありませんでした。また事業内容は中高生向けの塾だったのですが、私はもともと社会人に向けた事業がやりたかったので…

正直に言うと、異動は前向きではありませんでした。でも、せっかく期待してもらっているし、さっきも言ったように断らないタイプなので「行きます!」って答えたんです。

ー学生時代の価値観が社会人になっても根付いているんですね。

ただ、新規事業という観点では楽しかったですけど、苦しいなと思う場面はたくさんありました。

自分が受験せずに中高時代を生きてきたため、いわゆる受験塾に通ったことはありませんでした。なのでお門違いすぎて分からないことも多く、自信が持てず、本当に辛かったです。

あまりに辛いから会社をやめようと思ったんですけど、そこでドットジェイピーでとてもお世話になった方に相談しに行ったんです。

そしたら成績評価でいう秀優良可の“可”になるまではやれ」って言われたんです。それを言われて納得しました。やり切らないと後悔する、と。なので、自分の中の”可”のラインとして、当時組織が設定していた目標数字に至るまではやろうと決めました。

結果、しばらくして、目標を達成することができそこを区切りに次のステップを考えることにしました。

ー自分で決めた目標を達成させたところに、目標必達の精神性が垣間見えます。

そこから元々いた組織にに戻していただくか、転職するかどっちがいいかを考えて、結果、グロービス一択で転職活動をしました。やっぱり社会人向けのビジネスがやりたいと思ったんです。

もう1つは塾を始めてみて、個人のスキルを伸ばすことが大事だと気づいたんです。塾に通うと伸びる子はとても成績が伸びるんですよね。そういうのをみていて、一個人のスキルを磨かなければキャリアは開かれないと思ったんです。

自分の中で整理したとき、リンクアンドモチベーションに入った時は社会人ひとりひとりの「やりたい」「もっとこうしたい」という気持ちを創出したいと思っていたけど、「やりたい」という気持ちを醸成するだけでは、キャリアは実現できないことに気がついた。塾の事業に関わったことをきっかけに、個人の能力開発もセットでやらないといけないと思って、その二つの両立が叶うグロービスを選んで転職しました。

ー「断らない」ポリシーで挑戦したことが自分の本当にやりたいことや次の仕事を選ぶ指針を明確にすることに役立ったんですね!

前編はここまで

今回の記事では、学生時代から今までのキャリアについてお伺いしました。

政治記者を目指して大学ではドットジェイピーで厳しく、忙しく活動してきた学生時代。

そこでの経験から働く目的を見つけ、最初の会社での新規事業に携わったことをきっかけに、グロービスへの転職につながっていきました。

社会人になってからも、いろんな場面で、学生時代の「断らない」「頑張る」の価値観が根付いてることがわかります。

次回はそんな山岸さんの仕事への向き合い方や意識についてお伺いしていこうと思います。

「断らない」精神が選択肢を増やした<後編>