就活はバイト探し感覚でもいい。

学生目線で、先輩方に多様な「幸せの見つけ方」を問う。
不確実な未来に前を向く、バックキャスティングメディア「FOREFACE」。

記念すべき第1弾は、大企業に勤めた経験もあり、現在は独立して地域と2拠点で活躍されている土井隆さん。
学生の頃から地域で働くことを見据えていたのか、それを踏まえて就職や転職を考えていたのかについて、お話を聞いてみました。

土井隆 氏

鹿児島県長島町地方創生統括監/株式会社コアース代表取締役/慶應義塾大学SFC研究所所員。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、楽天株式会社を経て、株式会社ルクサにてEC事業に従事。2012年、株式会社コアース設立。市民活動を支援するWEBサービスのプロデュースを事業とし、慶應義塾大学SFC研究員として地域社会における教育の研究を行う一方、2017年より鹿児島県長島町の地方創生統括監として地方創生の現場での取り組みを行っている。

普通コンプレックスを抱えていた学生時代

ーどんな学生時代を過ごしていましたか?

 高校時代に、とある大学の授業を体験させてもらったんだけど、穴埋め問題みたいでつまらなくて、目的がわからない暗記だけの授業のようだと思ってしまったんだよね。結局、慶応義塾大学の藤沢キャンパスに入学し、そこでは映像をやったり、いろんなことに手を出していました。

自分自身振り返ってみると、学生の頃はやっていることをコロコロと変えていたなと思います。

カンボジア旅行での様子

 当時の夢は世界情勢に興味があってジャーナリストになることだったので、シリアに留学をしたり、I-MAGE※では2006年に9月11日に世界同時多発テロを偲んでニューヨークのグラウンドゼロと丸の内を中継するというプロジェクト「Nowall Vision」を企画実施しました。

その時、僕はニューヨークに行ってノートパソコンとwebカメラをもってグラウンドゼロで中継をしていました。これは大学3年のときですね。

I-MAGEでの活動(NYと丸の内を中継)

※ NPO法人 創造支援工房フェイスが主催するコミュニケーションデザインカレッジ I-MAGE(URL)土井さんは、I-MAGE 5期に参加。

ーそれだけたくさんのことにチャレンジできるモチベーションはなんだったのでしょう?

 色々やってはいたんですけど、振り返ってみると結局一つのことを突き詰められることはなかったかも、とも思っています。
とりわけ「○○しないといけない」とか考えることも不安もなく、当時は自信過剰だったかもしれないな。

恐怖心はなかったですね。恐怖を免れるためだとモチベーション的に続かないと思うので。
ただ「普通になりたくない」というようなコンプレックスはありました。

学生の時は「普通コンプレックスがある」なんて周りには、言われましたね。

ー「普通コンプレックス」ですか。初めて聞きました!

 色々なことやっている人が周囲にはたくさんいるから、何かやりたいなと思いながら無理していたっていうのはあるかもしれないですね。

当時思っていたことは、みなさん色々な目標を持っていたり、技術を突き詰めてたりしていたけど、僕自身は、やりたいことがコロコロ変わっていたなって。

ー当時はどんなことをしていたのですか?

 さっき言ったジャーナリストになりたいなと思ってアラビア語勉強したけど、これじゃ食べていけないなと思って1年半くらいで辞めちゃったし、電子工作やって時期もあったけど1年くらいで辞めちゃったし…。

何か突き詰められてないなというのはすごくありました。今でもそうなんですけど。でも行動しなかったことはなかったと思います。

ーなるほど!普通コンプレックスという言葉は初めて聞きましたが、私も似たような感情は抱いています。何かしていないと不安になるというか…

初めての就職と出会いが生んだ転職

 海外と繋ぐ企画をやっていたこともあって、広告賞を取ったし、こういうのができるっていうことは企画もきっとできるし「企画をやるなら広告代理店だろう」という考えで広告代理店を受けられるところは受けました。


その時は自信過剰になっていたので、内定をもらえるだろうと思ってたけど、全落ちしましたね。業界は違いますが、唯一内定をいただけたのは楽天で、そこに入社をすることにしました。

ーどのようなお仕事をしていたのでしょうか?

入社してECコンサルタントという業務につき、楽天に出店している企業に対して通販のコンサルティング業務を行っていました。

ーお仕事は大変でしたか?楽しみはどんなことがありましたか?

インターネット通販にとりくむ自分のクライアントの売上を上げたりすることが楽しかったです。仕事で出会った中小企業の社長さんたちとのやりとりも楽しかったですね。

ー当時大きな失敗はありましたか?

たくさん失敗しましたがが、大きな失敗は記憶にありません。生きている限り取り返せない大きな失敗はないと思っています。

ーその後のキャリアについて教えてください。

楽天在籍時にある会社の新規事業に取り組むことになりました。
それが当時ビズリーチがはじめたルクサというサービスです。その後分社化して、その会社に転職しました。

ー転職してよかったと思いますか?

そうですね、最初の仕事で得たつながりが、今の仕事に生きていると思います。
今でも前職の方を含めて大学の友人やいろんなつながりで仕事をしています。

就活はバイト探し感覚でもいい

ー就活について土井さんの考えをお聞かせください。

 スタートはどこでも、最後は同じところに行き着くと思います。色々チャレンジしてみて、自分のやりがいや、こだわりを見つけていくことができるから、そこまで大きく考えすぎなくていいんじゃないの?

正直のところバイト探しの延長線でいいと思いますけどね。

ーでも、年収やキャリアは気にしてしまいます…

サラリーマンの時は、年収から自分の生活を逆算して考えていましたが、自分で起業してから考えが変わりました。
年収は下がることもあるけど、足りない分を取りに行く、という感覚になりましたね。

10年後、20年後の未来について

ー10年後20年後のご自身はどんなことをされていると思いますか?

2歳の子供がいるのでそれを軸に考えちゃいますね。20年後には子供も20歳になってるのかって思っちゃいますね。

ー土井さん自身はどのようなことをされていると思いますか?

1つはもう少し行政の仕事に近づいているかなと思います。やっぱり、プロデューサーとして新しいことを突き詰めていくこと。

ーそのうえで何か大切にされていることはありますか

求められるときに、何が出せるかということが大事かなということと、自分がどうしたいと言うよりは、どういう人と付き合っていたいかの方が大切だと思います。

ー仕掛ける側にいたいということと、社会的なインパクトを重視されているんですね

そうですね。難しいですけど。

土井さんからのFORE FACE

SNSのように”いいね”は一人一票ではない。大切なひとの”いいね”は一つで2億個の価値なんです。
見えない大勢を気にするな!!と言いたいですね。

幸せになるための1つの要因である”自己承認欲求”のような考え方は、SNSによって加速的に僕たちの考えを侵食していると思う。

ー自己承認欲求は無くすべきだと思いますか?

そこで言うと、思うのは、誰の承認なのかがもっと大切だと思う。
大切な人からの承認が大切で、相対的なものだと考えるのが大切なんじゃない。
そしたらもっと楽になるじゃないかな。

ーじゃあ、何からはじめたらいいんでしょう?

いろんな人に話を聴くことからはじめよう!しっかり事前に準備して考えて、賢いなと思ってもらえる質問をする。
こいつすごいなっておもってもらえるように!斜め上の人に話を聞いていくのが超重要だと思います。

ポイントとしては、①相手のことを事前によく調べる、②自分の興味があることと相手の情報をマッチングさせる、③最近のトレンドに繋げる、ことでしょうか。

インタビューを終えて。

土井さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

私が一番土井さんのお話を伺っていて一番インパクトに残ったことは、「就活はバイト探しの感覚でいい」ということです。大学4年生の私は、先日まで就活をしていたので、この言葉がより刺さりました。

私を含め、就活生は、人生がかかっていると思いがちで、ナイーブに考えることが多いと思います。
しかし、私たちより長い人生を”普通コンプレックス”という自分の行動の意味を真剣に考えながら生きてきた土井さんのお話はとても説得力があり、どの道をいっても結局は自分がやりたいことにたどり着くという強いメッセージ性を感じました。

この強く生き抜く力、考え方が少しでも読者の方に届いていたら嬉しいなと思います。